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スーパーカミオカンデと神岡鉱山

ニュートリノ観測の意義

素粒子物理学における大統一理論の検証。これが神岡鉱山で行われている研究の究極の目的です。自然界に存在する基本的な力を一つの理論で統一的に説明しようとする理論です。物質の基本的な構成要素の一つ陽子が最も軽い粒子に崩壊してしまうという陽子崩壊もこの理論で予言されています。また、この理論は宇宙初期が超高温、超高密度であったとする説とも密接に結びついており、その検証は、宇宙誕生の謎を解く研究ともいえます。

その検証のための鍵が、素粒子の一つであるニュートリノの観測にあるのです。その存在および性質を確認することで、これらの理論が証明される手掛かりの一つになるとされています。ニュートリノは、宇宙から飛来し、他の物質と相互作用することがほとんどなく地球をも通り抜けてしまうため、観測が非常に困難な素粒子です。そのため、観測の邪魔となる他の宇宙線が遮られた環境で、観測の確率を高める巨大な装置の設置と、観測に不可欠な純水の調達が可能な場所が求められていました。

カミオカンデと神岡鉱山

カミオカンデ実験装置

こうした一連の研究を続けて来られ、2002年にノーベル物理学賞を受賞された小柴東大特別栄誉教授は、当時、ニュートリノの研究に最も適した場所として、いくつかの候補地の中なら、私たちの鉱山、神岡鉱山に白羽の矢を立てられたのでした。1981年に東京大学からの要請があった後、時を置くことなく三井金属は、ニュートリノ観測装置の建設を受け入れ、すぐさま装置設置のための鉱山内の空間建設に着工しました。こうして1983年に完成されたのが、カミオカンデだったのです。地下1,000mという場所に、当時としてはとてつもなく大きな空間が築かれました。

私たち三井金属がこれまで培ってきた鉱山技術は、この時、岩盤エンジニアリングとして新たな実績を生むこととなったのです。

1983年、ニュートリノの観測が開始されて以来、カミオカンデによる研究の輝かしい実績は、もはや語るまでもなく、小柴東大特別栄誉教授のノーベル物理学賞受賞が、その全てを表しています。1987年、大マゼラン星雲における超新星爆発からのニュートリノ観測に世界で初めて成功。これが小柴東大特別栄誉教授の受賞理由となりました。

カミオカンデは、世紀の大発見を経て、1996年、その使命を終えました。現在、旧カミカンデのあった空間には、東北大学の研究施設カムランドが設置され、異なる手法でニュートリノの観測に挑まれています。

カミオカンデからスーパーカミオカンデへ

スーパーカミオカンデは、カミオカンデが役目を終えた1996年より観測が開始されました。カミオカンデと同様にスーパーカミオカンデも神岡鉱山の地下1,000mに建設されましたが、大幅な性能の向上のためにカミオカンデよりも約11倍の容積を誇る円筒形の大規模な地下空間(直径39.3m、高さ41.1m)が必要とされました。しかし、飛騨片麻岩はコンクリートの約5倍の固さであり、非常に堅固な地盤を堀削する必要がありました。

そこで、三井金属が岩盤エンジニアリングの粋を集め、スーパーカミオカンデ用の巨大空間を築いたのです。これにより、スーパーカミオカンデのタンク内には、約5万tの純水とカミオカンデの10倍以上の光検出器が設置されました。

そして、1998年、宇宙から飛んできたことで生成される大気ニュートリノ中のミューニュートリノと地球の裏側からやってきたミューニュートリノを観測した結果、地球の裏側からやってきた方が半分しかないことがわかりました。ミューニュートリノが地球の内部を通って来る間に、タウニュートリノに変化してしまったためです。この観測結果がニュートリノ振動の発見であり、これによりニュートリノにはわずかながら質量があることが証明されました。

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それまではニュートリノの質量はないと考えられていたので、その発見は従来の常識を覆す画期的な成果でした。この成果が、2015年、梶田東大教授のノーベル物理学賞受賞理由となりました。

世界が注目する研究の舞台〝神岡鉱山〟。今、神岡鉱山は、これまでの鉱物資源を生み出す鉱山から、宇宙線研究の最先端の鉱山へと生まれ変わっているのです。

神岡鉱山で行われる素粒子物理学・宇宙物理学の研究の歩み

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1982年 カミオカンデ着工(東大宇宙線研究所神岡地下観測所の装置)
1983年 カミオカンデ竣工
1987年 大マゼラン星雲超新星爆発によるニュートリノ観測に成功(世界初)
1991年 スーパーカミオカンデ着工(同上施設の観測装置)
1995年 東京大学宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設設置
1996年 スーパーカミオカンデ竣工(カミオカンデによる観測を終える)
1998年 梶田東大助教授(当時)がニュートリノに質量がある証拠を捕らえる
2002年 カムランド建設(東北大ニュートリノ科学研究センターの観測装置)
2002年 小柴東大名誉教授(当時)がノーベル物理学賞受賞
2015年 梶田東大教授がノーベル物理学賞受賞

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