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トップメッセージ

統合思考経営を前へ。

ステークホルダーと連帯し、社会的責任に取り組み、事業で環境・社会課題を解決する。

サステナビリティは、単なるトレンドやブームではなく、生き抜くための戦略です。統合思考経営による変革を進めることで、コロナ危機だけではなく、将来発生する危機に対してもレジリエントな企業体になれるのだと確信しています。

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔み申し上げますとともに、罹患された方々には心よりお見舞い申し上げます。また、医療従事者をはじめとする感染拡大防止に尽力されている多くの方々に心より敬意を表します。

2019年度の世界経済は、米中貿易摩擦や中国経済の減速の影響が懸念される中で、全体としては緩やかに回復していたものの、2020年に入り COVID-19 のパンデミックにより、経済活動が抑制され景気は急速に悪化しました。先行きの不確実性が一層高まり、世界は未曾有の経済的・社会的危機、コロナ危機に直面しています。

私たち三井金属グループの事業活動も、日本や海外拠点がある多くの国で緊急事態が宣言され、中国、ペルー、マレーシア、インド、アメリカ、メキシコでは、操業停止を伴う大きな制限を受けました。当社グループにおいては、従業員やその家族の人命、健康・安全衛生の確保を最優先に、拠点やサプライチェーンに対し迅速に緊急対応を進め、操業の継続を図っています。当社グループの対応策にご理解を賜り、操業への影響の最小化にご協力いただきましたお客様、サプライヤーの皆様や従業員をはじめとするステークホルダーの皆様に、あらためて深謝申し上げます。

サステナビリティが統合された経営

2019年、三井金属グループは、中期経営計画として「19中計」 を公表し、創業150周年を迎える2024年のありたい姿として、「機能材料、金属、自動車部品の3事業を核に、成長商品・事業を継続的に創出し、価値を拡大し続けている会社」 を掲げました。このビジョンを実現するために、サステナビリティが統合された経営、即ち統合思考経営を進め、「成長基盤の変革」 を実行することをコミットしました。

私たちの理解しているサステナビリティとは、経済、環境、社会、いわゆるトリプルボトムラインと呼ばれる3つの側面からの、三井金属グループと社会や地球も含めた持続可能性です。

コミットと同時に、初めてとなる 「統合報告書2019」 を発行し、価値創造プロセスにおいて、ビジョンへのアプローチの全体像を示しました。そしてビジョンから落とし込んだ、統合思考経営に基づく成長基盤変革の方向性や、具体的な経営戦略を紹介いたしました。

当社グループは、3つのコア事業による環境・社会課題の解決に貢献する製品やサービスの提供、長期的にバリューチェーン全体に渡り生じうる事業活動の負の影響 (リスク) の最小化という、事業と社会的責任の2つの柱からなる戦略によって、企業価値を向上させる企業体に変貌することを明確に打ち出しています。事業による利益(経済的価値)と事業活動への責任を果たすことによるアウトプットが、新たな企業価値を生み、私たちのビジョンを実現していきます。また、アウトプットは、外部環境において社会的価値を生み出します。当社グループの社会的価値は、国連SDGs のうちとくに目標8 「働きがいも経済成長も」、目標9 「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標12 「つくる責任 つかう責任」、目標13 「気候変動に具体的な対策を」 の達成に寄与すると考えています。

2019年度はこの経営戦略に基づき、事業では主に、キャリア付極薄銅箔等の5G関連製品や四輪車向け排ガス浄化触媒の開発や拡販、非鉄金属リサイクルの強化、自動車部品の生産や現場管理のICT化を推進しました。また、社会的責任への取組みとして、リスクのうち財務面に対し影響を与える可能性が高い、環境面の 「温室効果ガスの排出、エネルギー、水、廃棄物と有害物質、生物多様性」、社会面の 「従業員や地域コミュニティ、サプライチェーンの人権」、ガバナンス面の 「ガバナンスとコンプライアンス」 に係る課題について取組みを強化しました。

こうした取組みを進める一方で、短期的には、主要製品の販売が計画を下回り、足下の COVID-19 のパンデミックの影響により2019年度業績と2020年度計画について、「19中計」 からの下方修正を余儀なくされています。パンデミックの終息時期は不透明であり、経営の舵取りが非常に厳しい局面にあると認識しています。

俯瞰的洞察

予期せぬパンデミックにより、戦後最大の不況期が世界規模で始まったという声もあります。企業経営においては、もう SDGs のブームは過ぎ去ったとばかりに、短期対策で危機に対応すべきといった動きも一部で見られます。

しかし私は、経営者として、こうした危機の時こそ近視眼的なものの見方に陥ることなく、長期的な視点を失わずに企業体の本質と課題の本質に依拠した施策を講じていくことが、生き抜くための経営の要諦であると考えます。外部環境がどうあろうとも変わらない当社グループのアイデンティティや、世界の様々なレベルの課題を俯瞰的に洞察することが必要です。

アイデンティティを問い直す

三井金属グループの価値創造プロセスの中心には、6つの資本を活用し製品やサービスを生み出すというビジネスモデルがあります。このビジネスモデルは、長年に培い進化させ続けている、分離精製、粉体制御、材料複合化といった独自の技術 (Core Technology) と、これらを活用する技能を持つ多様な人財という強みに支えられています。そして、これら強みをもつ各事業ドメインが、バリューチェーン上のそれぞれの位置において事業を行なっています。それらを俯瞰すると、ひとつの企業グループの中に、動脈産業から静脈産業、そして再び動脈産業へとリソースを回す、閉じた(Closed)バリューチェーン・ループを捉えることができます。これは、リソース循環への競争優位と解することができ、循環型経済という世界レベルの壮大なチャレンジを実現するポテンシャルを有しているといえます。この競争優位を最大限に活かし、課題を解決する成長商品・事業を創出していく、これが、スローガン 「マテリアルの知恵を活かす」 が指すビジネスモデルの核心であり、三井金属グループのアイデンティティです。

世界が抱える課題と連帯 (Solidarity)

世界がパンデミックに見舞われる一方で、2019年も、そしてこの2020年の足下も気候変動の進行の影響によるとみられる多くの災害が起きています。気候変動が他の問題と複雑に絡み合いながら忍び寄る危機であることを実感し、これまでのような経済活動を続けていては、地球自体がもたないというSDGs の背景にある危機感をあらためて認識しました。コロナ危機に際して企業は、SDGs 目標3 の中のパンデミックという課題のみ切り出し、「健康か、経済か」 という 2つの対立軸で思考していては、課題の本質を見誤り、講じるべき施策を誤ってしまうでしょう。SDGsが示す世界が抱える課題は、複雑に関連しあっており、これらに対し、包摂性を持ち、統合的に検証し取り組むべきであると考えます。

また SDGs は全てのステークホルダーが参画し協調して、課題へアプローチすることを求めています。パンデミックに直面し、世界では 「連帯(Solidarity)」 という言葉に注目が集まっています。連帯とは、敵対し合うのではなく、様々なレベルで協調し合い、結束して危機を乗り越えていくことを意味します。さらに、連帯をキーに、「よりよい回復(Recover Better)」、「グリーン・リカバリー(Green Recovery)」 といった野心的な取組みも始められています。 

“いま” 取り組むこと

私たち三井金属グループは、ビジョンを見据え、統合思考経営による変革を前へと進めていきます。当社グループのアイデンティティを基に、SDGsに立脚した世界が抱える課題に対し、市場共創やエンゲージメントによるステークホルダーとの連帯を強化しつつ、よりよい企業体となるよう取組みを実行していきます。コロナ危機という外部環境の変化に応じて戦略の内容を見直し、“いま” 取り組むこととして次の4つの施策を実行しています。

第一に、リスクマネジメントとサステナビリティに関するマテリアリティの見直しです。今年4月、企業体としてのリスクマネジメントの改善に着手し、統合的かつ長期、短期、緊急時といった視点で、財務面に影響を与えうる事業等のリスクを特定しました。また、特定されたリスクへの対応策や、リスク評価のレビューを含めたリスクマネジメントシステムを再整備しました。2020年度はマネジメントシステムのさらなる見直しを進めていきます。

サステナビリティに関わるマテリアリティについては、事業と社会的責任の2つの柱からなる経営戦略に基づき、SDGsなどに示される長期的な環境・社会課題を、ステークホルダーからの期待の高さや当社グループの財務面への影響度という評価軸により絞り込みました。これらを長期視点による事業の機会とリスクのマテリアリティとしました。これらの見直しにより、当社グループのサステナビリティの方向性と財務面のリスクや機会を明確に示しました。

第二に、当社グループが貢献することを目指している 目標13 「気候変動に具体的な対策を」 への具体的な取組みとして、経団連のイニシアティブ 「チャレンジ・ゼロ」 に賛同し、4つの取組みをもって参加いたしました。当社グループのアイデンティティを映すものであり、いずれも本業の中で培った競争優位を活かしたものです。CO2から有用な原料となるCOガスの製造、再生可能エネルギー蓄電向け全固体電池の開発、デマンドレスポンスへの貢献、ISP製錬におけるコークスの代替燃料の活用といったイノベーションを目指していきます。気候変動、さらには目標12 「つくる責任 つかう責任」 につながる循環型社会への取組みを強化していきます。

第三に、当社グループが貢献することを目指しているSDGs 目標8 「働きがいも経済成長も」 や 目標9 「産業と技術革新の基盤をつくろう」 に関し、都市において人が実際に集まって大量消費することで利益を上げるというビジネスモデルは、今回のパンデミックにより今や成立が難しくなってきています。今後、都市の構造や需要が変化し、都市のイノベーションが進むことで、5Gが都市の壮大なイノベーションのインフラになるとの見通しがあります。5G関連市場のさらなる拡大が見込まれる中、銅箔事業、機能性粉体事業を中心に、需要に応じた計画の見直しを行なうとともに、成長機会を捉えた新規事業の創出、機を逃さない市場への投入を図っていきます。

自動車に対する世界的な需要は見通しにくくなりましたが、未来のモビリティ社会を目指す取組みはこれからも続いていくでしょう。自動車部品事業ではしっかりとCASEに対応していきます。また、都市のイノベーションが進化していっても、その物理的な骨格を構成している基礎素材は必要であり続けます。金属事業ではリサイクル製錬を深化すべく、銅製錬事業の枠組みを見直し、亜鉛・鉛・貴金属製錬に銅製錬を加えた 「新たな製錬ネットワーク」 のシナジー再構築を進めていきます。

第四に、前述のようなイノベーションの根源となるのは、独自の技術と人財という強みに支えられた当社グループの競争優位と、ステークホルダーとの市場共創です。ステークホルダーとの協業を強化し、強みである独自の技術と人財を事業創出活動に注力させるため、今年4月、研究開発と市場共創の機能を 「事業創造本部」 として機能材料事業本部から本社部門へ移管しました。事業創造の基盤を整え、競争優位を確たるものとし、ステークホルダーとの連帯を深め、環境・社会課題に対応するイノベーションを創出していきます。

危機に対してレジリエントに、サステナブルに

コロナ危機は、バリューチェーンに大きな変化をもたらし、当社グループのビジネスにも大きなインパクトを与えることになるかもしれません。一方、世界のあらゆるレベルで、これまでのマインドセットが転換する中で、 SDGs の理念である 「Transforming Our World」 が、より現実味を帯びて私たちに響きます。2030年までに達成しようというSDGsのゴールに向け、課題解決のための壮大な変革を実行するべき時、それが今ではないでしょうか。

三井金属グループは、長期的視点で、世界が抱える課題に立脚した、統合思考経営による変革を前へ進めることにより、コロナ危機だけではなく、将来発生する危機に対しても、レジリエントな企業体になれるのだと確信しています。サステナビリティは、三井金属グループにとって、単なるトレンドやブームではなく、生き抜くための戦略です。私たちは、どんな危機に直面しても、短期主義に陥ることなく、バリューチェーンに関わる人々、地球やこれから生まれてくる未来の世代のことを考え、ステークホルダーとともに行動していく、そうした企業グループでありたいと思っています。

(2020年7月)

代表取締役社長 西田計治

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